なぜ長編漫画は、範馬勇次郎ポジションを導入できないのか。
- 作者: 板垣恵介
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2006/04/07
- メディア: コミック
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範馬勇次郎とは発明である。いや第一人者としてのという意味では少々違うのかもしれない。究極としての、完成形としての、それである。
「登場人物中唯一、アウト・オブ・ルールな場所に棲息し(すなわち物語と主従関係にいない)、物語世界を縦横無尽にかつ傍若無人にかけることができ、物語の潮流に規格外の超弩級の極太に血管の張った横やりを突ける存在」としての範馬勇次郎。
ぐらぐらと緊迫と閉塞を保つジェンガにいきなりタックルされたかのようなインパクトと、そのリセット感。巨大化しつつも鈍足になってしまう長編漫画のパワーバランスとして、核ミサイルのスイッチのように機能するのが、範馬勇次郎である。実際ボタンは押されなくいい。彼がいることで世界にピンと糸が張るのだ。あなたは最強死刑囚編を読んでいるだろうか。あれはもう(呆れた顔で言うときの)カオスである。だが同時に奇跡でもある。カオスを読めるという奇跡。範馬勇次郎が可能にした奇跡である。
それでだ。生来のジャンプっ子としては考えるじゃないか。「他の長編漫画では誰がそのポジションに位置しているのか」を。だって彼にとっては長編漫画の延命装置でいることなんて取るに足らないほどに容易いんだぜ。他の漫画が導入しないわけがないと思うんだ。
[範馬勇次郎を探せ]
まずというか、やっぱり僕のホームである週刊少年ジャンプの現在の面子から考えてみる。
- 『ONE PIECE』 あれ、いなくね?海軍の大将3名(青キジとか)が有力候補。でも多分作者的には用途が違う。
- 『ナルト』 いない。暁を範馬勇次郎的に使ったらもっと世界に奥行きがでたかも、とは思う。
- 『HUNTER×HUNTER』 暗殺一家と幻影旅団がかなり近いかもしれない。でも彼らは物語と主従関係にある。惜しい。ジンが有力候補。
- 『BLEACH』 いない。旧式のパワーインフレなので当たり前っちゃ当たり前。
- 『D.Gray-man』 いたーっ!!!クロス・マリアン元帥。現時点ていう条件付きだけど。うーん、やっぱり物足りないか。惜しい。
- 『ジョジョ』 ディオか吉良かディアボロかな、候補としては。でもボスとはまた違うんだよね。
そう、いないのである。漫画全般で探してみても全然見当たらない。えー、なんでだろう。結局僕がかろうじて見つけたのは彼ひとりでした。
海原雄山。
原作読んだことないけど、なんとなく一番近いような気がする。漫画の構造的にも、キャラクター的にも。違いますか?てか「あいつがいるじゃん」と思った方是非教えてください。漫画に詳しい方情報求ム。あと漫画史的に「それはどこから始まり、何を経て、範馬勇次郎になったのか。」も気になるなぁ。と、特に結論もないまま放り投げて終わります。はい、いつもです。
[追記]
コメ欄より。『男塾』の江田島平八がいたーーー!!!!すっかり忘れていました。では江田島についてちょっと。
江田島は、ジャンプファンどころか漫画読み全般に愛されてる、しかもある意味でオーガ以上のインパクトを持ったキャラクターであると思います。でもそのスゴさはオーガ的なものとは少し異なっているんですね。桃達と江田島の間には、言うなればペンギン村にやってきた悟空とアラレちゃんのように「次元の違い」がある。ギャグ漫画的介入というか、カートゥーンのキャラクターを実写の人間が踏む潰すようなインパクトの種類。一方、オーガ的インパクトというのは「同じ土俵なのに」*1がベースとしてなければならない。オーガがスゴいのは、トランクス初登場のインパクト*2を延々に保ち続けれることなんですね。そこがオーガの特異さなんです。
あと、「勇次郎はラスボス兼ジョーカーというポジションなのですかね。でも最近の印象だとバキが一番ジョーカーキャラっぽい・・・。」という意見も。これは非常に興味深い。確かにそーなんですよね。思うに何故『バキ』がバトル漫画の極地であり末期であるのかは、(番長が存在せず)裏番長だけがいる世界だからなんじゃないかと。バキもオーガも、なんか騒ぎがあったら「おいおい、誰が一番かわかってんだろーな?」と釘を刺してくる。なんでしょーか、この不健全なバトル漫画は。やっぱすげーなこの漫画。
その他にもたくさんの意見を頂いてます。もうオーガ杯が開催できる感じでしょうか。もちろん決勝で、主賓席にいた江田島が突如乱入して優勝!みたいな展開ですよ。引き続きオーガ杯の出場枠を埋めるようなものすごい猛者を募集中です。
[追記追記]
各キャラに微力ながらコメント。