『少年メリケンサック』


少年メリケンサック』 監督:宮藤官九郎 出演:宮崎あおい 佐藤浩市


「○○だよ、○○!」でばしっと通じちゃうような言葉はウサンクセーと思ってて、たとえば「ハートだよ、ハート!」とか「ソウルだよ、ソウル!」とか。で、もちろん『少年メリケンサック』についてもそりゃパンクがテーマなわけだから「パンクだよ、パンク!」があるんだけど、それについて決して露骨ではない懐疑を腹に隠し持ってる気がして、そこはちょっと好感持てたなあ。逆にこの映画を叩いてる人の「パンクだよ、パンク!」が疑うことを知らな過ぎててクドカンよりも胡散臭く感じてしまったような。スピリチュアルな何たらを聞かされてるのと同種の気持ち悪さと言ったら怒られるだろうか。もちろん俺がパンクに馴染みないことが一番の理由かもしれんけど。
映画自体もそこそこ好きで、特に「おっさん、ちゃんと生きれんじゃん」ていう複雑で(体臭に埋もれてしまうような)悲哀をぐっと内に飲み込んだ結末というか終盤はちょっとぐったきたなあ。おそらく彼らには「パンク」っちゅーもんがあって、俺には推測しかできないけれど、推測する限りでは、彼らは「パンク」以外に生きられないことを証明したくて、すなわち彼らの人生の無駄さが「運命としての無価値」であったと信じたくて、だからこそ彼らは「パンク」に殺されなければならなかったのだけど、結局ちゃんと生きれんじゃんという。そこで彼らの「パンク」がふぁさーと手元から霧散していく、しかもそこに気付かないように「残酷にも」充実が覆っているっていう、さよならも言えない幻想の消失をうまく映画にパックできてたんじゃないかな。面白かった。
余談だけど、構造が『リトル・ミス・サンシャイン』と似てて、でも映画としての出来はあきらかに『リトル・ミス・サンシャイン』がいいのな。あの道中もうちょっと面白く撮れんかったものか。